囚われの王子様。
『玄関まで運ぶよ』
マンションまであと数分、というところで須藤さんがそう言った。
重くてひとりで運ぶのは大変だろうからと、有難い言葉なんだけど…。
わざわざ車出してもらって、お金も出してもらって。
マンションの部屋に運んでまでもらうってなると、コーヒーでも飲んで帰ってもらうべき?
だけど、男の人を安易に部屋に入れたくない気持ちもある。
でも、部屋の前まで重いものを運んでもらって、『はい、さようなら』って言うのもな…。
須藤さんに危機感なんて1ミリも抱いてはないんだけど、やっぱり躊躇してしまう。
そう頭の中でぐるぐる悩んでいるうちに、マンションの前まで着いてしまった。
道路の脇に停め、車を降りる。
「結構良いとこ住んでるな」
トランクから降ろした重い灯油タンクをふたつとも抱えた須藤さんが、少し驚いたようにそう呟いた。