そのアトリエは溺愛の檻
「百音はあんな記事信じてないと思ってた。バルコニーで撮影した日、百音は口に出さないけど俺と同じ気持ちなんだなって思ったから」

「同じ、気持ち?」

「好きだってこと。伝えただろ?」

「だって、重秋さんは人気もあるし、凄い人だし、私からしたら雲の上の人だから」

「それはアキだろ。百音の前ではアキとしてでなく工藤重秋として過ごしてるつもりだったのに」

「それでも、違う世界の人でした」


だから、一般人の私でなく、世界の近い水嶋雪乃が選ばれて当然だと思っていた。


彼は一度目を閉じ、そして私を見た。


「百音は本当に覚えてないんだな」

「何のことです?」

「俺たちの出会い」

「四月の写真展でなく?」

「大学祭だよ。高校生の百音を撮ったの、覚えてない?」


重秋がチェストへ歩き、別の引き出しから二枚の写真を取り出して差し出した。


「これ……」

一枚目のインスタント写真に写っているのは、まだ学生の頃の私で、少しぎこちなく笑っている。そして二枚目はツユクサの写真だった。

そのどちらにも見覚えがあった。


「これって……!」

「思い出した?」


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