そのアトリエは溺愛の檻
高校二年のとき、大学の雰囲気を知るためにいろいろな大学の学祭に遊びに行った。こんな偏差値が高くて私が入れるはずもない大学にも行っていた。

あの時、写真サークルか何かの展示を見に行って、無料撮影体験があって写真を撮ってもらったんだ。背が高いせいかモデルみたいだねってかっこいい大学生に言われて嬉しかったのを覚えている。

「倉橋で会ったとき言っただろ。無名の頃に出会ったって」

「あれ、嘘じゃなかったんだ……」


講義室か何かで、プロジェクター用のスクリーンを背景に簡単に一枚撮っただけだし、展示を見に来た全員にサービスで撮っているのだろうと考えていた。

「あの時百音は、何作品もある展示の中で、俺のそのツユクサの写真をじっと見てたんだ。『この写真好きだな』って。本人が目の前にいると気づかずに『他の写真ももっと見てみたい』って言ってた。俺が『それ撮った奴、家庭の事情で今回限りで写真はやめるらしいんだ』って言ったら百音は残念そうに『そうなんですか?』って」

「少し、思い出しました」
< 106 / 113 >

この作品をシェア

pagetop