そのアトリエは溺愛の檻
かすかな記憶が蘇ってきた。その後は確か、そう、最高の一枚の話をしたんだ。


「少し? 俺は全部覚えてる。俺の人生を変えた高校生の言葉をね」


『この人がいつかこの先撮る人生最高の一枚を見てみたかったのに残念だなぁ』

『人生最高の一枚?』

『インタビューか何かですごい写真家の人が、人生最高の一枚を撮るために写真を撮り続けてるって言ってて』

『へぇ』

『芸術家って感じですよね。でも自分の好きなことを追求してるって素敵だな、羨ましいなって思ったんです。苦しみも大きそうだけど、でも幸せなんだろうなって』

『俺もそう思うよ』

『ですよね。この人もこんな写真が撮れるのにやめるなんてもったいない。好きだったことをやめても他じゃ代わりにならないのに。あ、でももし、万が一この人が写真を続けるようだったら、ファン第1号はこの子だって伝えてください。いつか最高の一枚を見たいですって言ってたって』

『わかった。約束する』


確かインスタント写真をそこにいた人に託したけど、あれが重秋だったってこと?
ツユクサの写真も?
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