そのアトリエは溺愛の檻
「俺はわざと反対の女選んでるだけ。つーか雨宮はぶつかるチャンスがあるくせに贅沢」

「私は……? って、どういうこと?」

「ったく、こんな話するつもりじゃなかったのに」

「え?」

「気持ちに気付いた時には相手がいたんだよ、俺の場合」


吐き出すような言葉を聞いて、ひとりの女性が頭に浮かんだ。
実は私はかつて賢木くんに対してそれを少しだけ疑っていた時期があった。


「それって、もしかして奥田さん?」

頷くことはなく、賢木くんは小さく息を吐いた。


「今からする話はすげーダセぇから聞いたら忘れろよ」

「うん……」

「背が高いだろ、ヒールのある靴だと俺とほぼ変わらない。でも相手は俺よりずっと背が高かった。そのことが俺の行動をほんの少し制限した。今思うとなんだそれって思うけど、あの時は動けなかったんだよ。まぁ、今の関係もそう悪いわけではない。でもあの時自分が動いてたら何か違ってのかと考えることはある」

「そうだったんだ」


いつも自信たっぷりなのに。賢木くんはそんな思いを抱えていたんだ。
< 98 / 113 >

この作品をシェア

pagetop