『俺様御曹司の悩殺プロポーズ』の文庫に入れられなかった番外編
その通りだが、妊娠してくれた愛しい妻を叱ることはできず、風原は「気にするな」と言おうとした。
しかしその前に、小春が早口で喋り出す。
「本当にごめんなさい!お詫びというか、お祝いというか……先に帰って、美味しいもの作って待ってますから!」
そう言うやいなや、背を向けてドアへと走り出す小春。
「バカ、走るな!」と風原が言って追いかけるのと同時に、床に這わせた配線にパンプスの爪先を引っ掛けて、小春は「キャア!」と悲鳴をあげた。
小春の体は否応なく前に傾くが、腕を引っ張られて、今度は逆に後ろに傾き、スッポリとスーツの胸に背中を受け止められて事なきを得る。
「お前は、バカか!」
「うっ、ごめんなさ……え!? 」
小春の体はふわりと浮いて、横抱きに抱えられていた。
風原は小春を抱えたままスタジオを出ると、スタッフの行き交う廊下をズンズンと進んで行く。
この夫婦は社内でなにをイチャついているのかと、周囲の呆れたような視線に小春は恥ずかしくなり、「下ろしてください!」と風原に言った。
「ダメだ。転んで腹の子に何かあったらどうする」
「もう走りませんから……」
「ダメだ。そのヒールは高くて危ない。今日はこのまま家に帰るぞ。明日からはフラットシューズで通勤だ」