『俺様御曹司の悩殺プロポーズ』の文庫に入れられなかった番外編

ヒールのある靴は禁止で。そこまでなら通常の範囲の注意事項に思えるが……風原の心配はそこでは終わらなかった。


「電車通勤はもうやめろ。俺が送ってやれないときは往復タクシーで。買い物はネットスーパーの宅配で、出歩かずになるべく家にいるんだ。家事もやるな。俺が全部やる……と言っても時間がないな。家政婦を雇うか。お前の仕事も減らすよう、上に掛け合ってみる」


妻と子を大切に思う風原の気持ちは伝わるが、それは極端というもので、小春は「もうっ!」と不満いっぱいの声を上げた。


地下駐車場まできて、やっと腕から下ろしてもらった小春。

助手席に乗り込んで少し待っていると、ふたり分の荷物を取りに行っていた風原が走って戻ってきた。

運転席に乗るやいなや、「寒くないか?」と小春を心配し、後部席に置いてある毛布を取ろうと腕を伸ばす。

その腕を掴んで「毛布はいりません」とキッパリと言った小春は、頬を膨らませてみせた。


「もっと違う、気の遣い方をして欲しいんですけど」


風原は困ったように、整った顔の眉を寄せる。

違う気遣いと言われても小春の求めることが分からず、「どうして欲しい?」と聞くしかなかった。
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