王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~


「……私のおばあさまが今の国王様の叔母に当たるから、私には三階には自由に上がれる許可があるの。そこまでは私の侍女として連れて行ってあげられるわ。そこからのことにも考えがあるわ。……でも先に、ひとつ私の質問に答えてくれる?」

「質問?」

「ええ」


ヴァレリアはちらりとセオドアを見た後、エマに耳打ちする。


「エマさんはギルバート様が好きだから助けに行くの?」


途端に真っ赤になるのはエマの顔だ。ぶんぶんと大きく横に頭を振り、「そんな私なんかの身分で……」と否定しようとしてやめる。

尋ねられているのは身分がどうこうじゃない。
セオドアとの恋を頼みに来たヴァレリアだからこそ、エマにその答えを求めているんだと気づいた。


「はい。……好きだから。彼を救えるなら何だってします!」

「そうよね。良かった。だったら私も、どんな協力でもするわ」

「本当ですか?」

「ええ、じゃあまずは着替えをしましょうか」

「え?」

ヴァレリアは満足そうににっこり笑うと、奥に下がっていた侍女を呼びつけた。





(今って、緊急事態じゃなかったっけ)

なのにエマは今、侍女の服へと着替えさせられてた。エマの服は代わりにヴァレリアの侍女が着ている。
ヴァレリアはこの数分のうちに、侍女を味方につけてくれていた。


「あの、ヴァレリア様」

「私の侍女だというならそれなりのものを身に着けてもらわないと疑われます。立ち居振る舞いも気を付けてね。私より先は歩いてはいけないけれど、私の先を見つめて危険があれば進言する。それもお付きの侍女の役目よ」

「そんなの無理です」

「やれなくてもやるのでしょう? 王太子様の元へ行くにはもっと無茶をしなければならないわ」

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