王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「え?」
「……あのね、エマさん。セオドアは殿下のご友人だけど、自由に三階に上がる資格は持っていないの。いつもだったら王太子様が許可を出してくださるけど、今、彼は眠っている。つまり、ここから上に行けるのは私とお付きの侍女に扮するあなただけ。ふたりでなんとか彼の部屋までの道を突破しなければならないのよ。言うほど簡単じゃないわ」
神妙なヴァレリアにエマも息を飲む。
「王太子様の部屋の場所は私がわかります。でも、今はご病気ということで、警備のものが数人ついているわ。……だから、王太子様の部屋の前で私が倒れたふりをするわね。当然お医者様が呼ばれるでしょう。王太子様の部屋にいたとしたら、出てくると思います。衛兵も私のほうに気が向くでしょう。その隙を狙ってあなたは王太子様の部屋に飛び込むの」
ヴァレリアの瞳は真剣だ。あのぽやっとした令嬢がこの筋書きを考えたのかと思ったらびっくりしてしまう。
「ヴァレリア様、あの」
「私、あなたや王太子様にいつかご恩返しがしたいと思っていました。だから昨晩からずっと考えていたんです。王太子様の元に行く方法を」
「え?」
「私の恋をかなえてくださったふたりにも、幸せになってほしかったんです。王太子様に聞きに行きたかったのですわ。エマさんのことはもういいのですか、と」
「ヴァレリア様……」
「自分がこんな考えを持つようになるなんて驚きました。前はお父様やお母さまの言うことだけ聞いてればいいと思っていたのに。……でも以前よりずっと自由な気持ちで、楽しいんです。今回のことも叱られるでしょうけど、それでもいいと思えるの。あなたなら、王太子様を救ってくれると信じているんですもの」
「ヴァレリア様……!」
「ほら、泣いていてはダメよ。これから大それたことをするんだもの。気を強く持たなくちゃ」