王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「あれ」
「あ、ギル。お前はなんでもすぐ口にするなよ」
「だってサービスで置いてあるんだろ?」
「そうだけど。まあここのは大丈夫だけどさ。お前の場合は毒見をつけてからじゃないとまずいだろ」
王太子であるが故の特別扱いがギルバートには不快だ。
「今はギルだからいいんだよ。それより、この飴なんなんだ。喉の痛みがすっと取れたぞ?」
「グリーンリーフ特製ののど飴だよ。販売もしてる。……おーい、客だぞ」
なかなか出てこない店員にしびれを切らしてセオドアが声をかける。店の奥から出てきたのは、ダークブロンドの髪をポニーテールに結った、快活そうな女の子だ。
「あっ、セオドア様。お久しぶりです。すみません。お待たせしました」
「やあ、エマ。騎士団の同僚が怪我をしたんだ。痛み止めと、湿布薬のようなものはないか?」
「打ち身ですか? ……見せていただいても?」
エマはカウンターから出てくると、ギルバートの前に立ちぺこりと頭を下げた。
「初めてのお客様ですね。グリーンリーフへようこそ。傷を見せていただいてもよろしいですか?」
はきはきとした耳障りの良い声。いきなり触るわけでもなく許可を取って来るような控えめさ。
ギルバートは目の前の女性に好感を抱く。
「構わないよ。……俺はギルというんだ」
「ギル様ですね。私、エマと言います。えっと。……うわ、赤黒くなっている。痛いでしょう、大丈夫ですか?」
「いや、平気だ」
自分の腕の痛みよりも、目の前の彼女の表情のほうが、よほど痛々しく感じる。彼女はすぐにカウンターのほうへ戻ると、塗り薬と小瓶を持ってやってきた。