王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「父上、なんてことをするのです。エマを早く解放してください」
「なぜだ。お前を眠らせた薬を作ったのだろう? なぜ彼女を庇う。お前をたぶらかし、この国を乗っ取ろうとしているに決まっているじゃないか」
「そ、そうですわ。あの子は魔女です!」
シャーリーンが味方を得たりとばかりに前のめりになった。
けれどギルバートは首を振る。
先ほどは驚いて咄嗟に対応できなかったが、ギルはエマが常に薬の使用量に気を配っていたことを知っている。
彼女のお茶は、人に安らぎを与えるもの。決して人に害を成すものではない。
「あの薬を持っていたのは、シャーリーン殿ではありませんか。薬を使ったのも、……でしょう? だって俺は体調を崩すようになってからはエマに会っていなかった」
「っ、それは」
「惚れ薬だと言ったな。君がそれを俺に盛ったんだろう? だから俺は君を婚約者にと選んだ。そうでなければ気が狂っていたとしか言いようがない。だって俺は、君のことはなんとも思っていない。いや、今はむしろ憎らしい。なにせ、君のせいでエマが捕まったんだから」
「そんな。……ひどいわ」
泣き出すシャーリーンと言葉に詰まる国王に、ギルバートは畳みかけた。
「俺が妃に欲しいのは、誰よりも人に優しく、誰のことも思いやれる人です。シャーリーン殿、例え作ったのがエマでも使ったのはあなたです。なのに、この場でエマはあなたを責めなかった。その意味をよく考えたらいい」
「私が悪いっていうの?」
「悪くないと思う理由は? 結果としてあなたは俺に薬を盛ったんだ。その罪はあなた自身が負うべきでしょう」
「……うっ」
項垂れるシャーリーンを一瞥し、ギルバートは国王に向きなおる。