王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~


「父上、エマを釈放してください。彼女に悪意などありません。俺はずっと薬室に通っていた。俺に何かしたいなら、彼女はあの時点でいくらでもできたはずだ」

「ダメだ。仮に何の罪もなくとも、薬師をお前の妃にはできない」

「どうしてですか」

「庶民の薬屋が妃になるなど、国民たちが失望する」

「人のためにと尽くす娘を、国民が嫌がると? 父上、エマは優しく賢い、素敵な女性です。父上も話せばわかる。とにかく、牢などからは出してください」

「いかん! これだけの大事になったんだ。シャーリーン殿とは婚約破棄しよう。であれば、わしは新たに花嫁候補を探すだけだ」

「父上」


肩を怒らせて去っていく父の後ろ姿に、「分からずやめ」と言い捨て、ギルバートは早足で部屋を出た。


「王子殿下、どこに行くのです」

「セオドア、止めるな。エマに会いに行く」

「国王様の手が回ってますよ」

「だからと言って、あんな寒いところでエマをひとりにできるか」

「では俺も行きます」


ふたりは連れ立って地下へと向かった。

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