王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~


エマは衛兵に連られて、城の裏口から一度外に出た。そのすぐ脇に扉があり、衛兵はそこに立っていた見張りに声をかける。


「どうぞ」


見張りはぺこりと礼をして、不思議そうな眼差しで連れられて行くエマを見た。
扉の中には地下への階段が続いている。どうやら牢とは、城の地下にありながら、外からしか出入りできない場所のようだ。

石造りの城のため、地下に入れば陽も当たらなくなり寒さは増す。もちろん途中にランプはかけられているが、ぼんやりと薄暗く気味が悪い場所である。
階段を降りてすぐ、牢番の詰め所のような部屋があり、まっすぐ廊下を進むと突き当り、左右に道が続いていた。

衛兵がやって来たことで、ひとりの牢番が駆け寄ってくる。


「衛兵殿。一体どうしたんですか」

「変な薬を作って王太子に盛った罪だそうだぞ」


引き渡したほうの衛兵は、「じゃあ頼んだぞ」と言って去っていく。

どことなく見覚えのあるその男は、「はい、たしかに」と言って衛兵を見送ったあと、おもむろにエマに向きなおった。


「エマさん……だよな。薬室にいた」

「あ、あなたは」


牢番は、客としてエマの薬室に来たことのある男だ。自らと子供が風邪をひいたと言われたので、薬を処方したことを覚えている。

牢番の男はエマの腕を掴み、牢へといざなう。しかし、その扱いは気遣うように優し気なものだった。

「あんたが薬を悪用したって?」

エマが黙ったままでいると、牢番は廊下の突き当りを右に曲がった。
そこから先は牢が三つずつあり、右手側が女性、左手側が男性となっているらしく、男性側の牢からはうめき声がして、エマは恐怖で体を震わせる。
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