王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「……凄いな。なんだこりゃ」
「でも薬で痛みを感じていないだけなので、無理はなさらないでくださいね。それと、全体的に痛みへの感覚が鈍くなっています。これを飲んだ後は訓練などはなさらないでください。怪我をしても気づきにくくなります」
「な、すごい効き目だろ?」
セオドアが片目をつぶる。
凄いどころの騒ぎではない。まるで魔法のような効き目だ。ギルバートは驚きで口もきけなくなっていた。
「さ、そろそろ戻ろう、ギル。ゆっくりし過ぎた」
夕方六時の鐘が鳴っている。グリーンリーフも閉店の時間だ。あと一時間もしたら、王城への吊り橋もあげられてしまう。
しかし、ギルバートはなぜだか名残惜しく、立ち去りたくない気持ちのほうが強い。
「ああ。支払いを」
「俺がしておこう」
セオドアがエマを引き連れ、支払いをしている間、ギルバートはエマをじっと見つめていた。
しかしエマは目の前の作業に夢中だ。セオドアから受け取った銀貨を確認することに没頭している。
「先ほどこの飴を舐めたんだが……」
ギルバートは大きめの声で呼びかける。エマの瞳が自分のほうを向いただけで、優越感に似た不思議な感情が湧いてくる。
「ああ、のど飴ですね。どうでした?」
「苦いな」
「えっ」
エマが信じられないというふうに目を丸くするので、ギルバートは面白くなって笑ってしまった。
「嘘だ。うまいな。少し頂いてもいいか」
「なんだ。……でしたらもう閉店ですし、サービスしますよ」
エマはギルバートの近くまで来て、サンプルとして籠に入れていた分の残りを袋に入れる。
「どうぞ」
「……ありがとう」