王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
小さな袋を受け取るとき、ギルバートの胸の奥でカチリと音が鳴る。心の中の鍵がかかりっぱなしの扉があくようなそんな音だ。
彼女はギルをまっすぐに見て、「どうぞお大事に」と笑った。
セオドアと連れ立って店を出て、馬にまたがり一気に王城まで向かった。
門をくぐり、厩舎に馬を返す。うつむいたまま口元を緩めているギルバートを、セオドアは不思議そうな顔で見た。
「どうしたんだ、ギル。……いや、ギルバート王子殿下」
遊びの時間は終わりだ。
王城に戻れば、ギルバートはこの国の今後を担う王太子なのだ。
「エマ、か。かわいい子だったな」
「ちょ、……、女性に興味はないって言ったばかりじゃないか……いや、ないですか。いくら気にいっても、庶民相手では国王が許しませんよ」
セオドアの苦言を、ギルバートは半分以上聞いていなかった。
ギルバートが知っている女性の笑顔は、あんなふうに目尻にしわが寄るものではない。口元は扇や手で隠し、控えめに俯きながらこちらを伺うものだ。
もう一度話がしたい。
ギルバートはそう思い、城下町のほうを見た。見張り用に開けられた壁の穴から、一望できる城下町。しかし、どれがグリーンリーフの明かりかなんて、ギルバートには分からない。
薬の小瓶と塗り薬、そしてのど飴の入った小さな袋を、うるさい従者に見つからないようそっと胸ポケットにしまった。