王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
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国王は謁見室で苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
朝から、ギルバートがこれまでと打って変わったような生き生きとした態度で、エマとの結婚を訴えてきているのだ。
夜どおしキンバリー伯爵から説教をされ、シャーリーンは薬をエマから奪い取り、使ったことは認めたらしい。その噂は、衛兵を通じて城にいる一部の者たちに広がっていた。
それでもエマを牢から出そうとしない王に、使用人たちもエマの無実を訴えてやって来ている。廊下に控えさせてはいるが、国王には集まったその人数の予想外の多さに居心地の悪い思いをしていた。
「ですから父上。エマを俺の妃にすると認めてください。そして、早く彼女を牢から解放していただきたい」
「ギルバート。何度言えばわかる。あんな娘が王太子妃になるなど、いったい誰が認めるというのだ」
「父上が、“あんな娘”という根拠は? 俺はエマが人から愛される娘だと証明できます。入ってくれ、ヴァレリア殿」
「はい」
呼ばれて、謁見室へ入って来たのは、セオドアに付き添われたヴァレリアだ。
「国王様。エマさんは人のことに親身になってくださる、優しい方ですわ。私だけじゃない、私の侍女も、この城の多くの人が、彼女の人柄と薬に助けられたんですの」
ヴァレリアの声は震えている。縁戚とは言え国王に一貴族の娘が進言するなんて恐れ多いことだ。しかし、支えてくれるセオドアに勇気づけられるように最後まではっきりと言い切った。
セオドアも、「恐れながら……」と後に続ける。