王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
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翌日のシャーリーンとの面会には、なぜかヴァレリアも参加していた。ヴァレリア曰く、「エマにひどいことをしたとき、証人にならなくちゃ」とのことだ。
ヴァレリアは、ある意味で保護者のような気持ちでエマを見ている。
やがてシャーリーンが入ってくる。ヴァレリアがいることに軽く眉を顰めたものの、無言のまま王太子殿下に一礼し、続いてエマの前に立つ。
「……エマ様、数々の無礼をお許しくださいませ」
殊勝に頭を下げたシャーリーンは、キッと目を吊り上げる。
「ご安心くださいませ。邪魔者は去りますわ。せいぜい怪しげな薬を作って、王太子様の寵愛を失わないようお頑張り下さいませ」
「……シャーリーン殿」
眉間にしわを寄せるギルバートを押さえるようにして、エマがすっと前に出た。
「シャーリーン様。これを」
エマが差し出した膏薬からは甘い香りが漂う。
「練り香水です。心を元気にする作用のあるハーブから抽出したオイルを練りこんであります。毎日、両耳元に少しだけお塗り下さい。これが使い終わるころ、苦しい心持ちがきっと解消されますわ」
「はあっ?」
「失恋は辛いものです。けれど、必ず糧にはなります。あなたが心を癒す時間を少しでも彩れるように」
エマは昨晩、遅くまでかかってこれを作ったのだ。シャーリーンのことは今でも好きではないが、時折見せたギルバートへの真剣な想いは、エマの記憶にちゃんと残っている。