王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「君に謝罪したいと言っている。会いたくないのならば断わることも可能だ。どうする?」
「謝罪……?」
シャーリーンに反省の心があるようには見えなかった。以前の謝罪も父親である伯爵から強制させられ渋々といった様子で、ギルバートともども辟易したものだったが。
「今更何を……という感じだけど」
「だよな。俺もそう思う。ただ、罪を咎めないと言った以上は断る理由もない」
「会うわ。王太子様は寛大なほうがいいわよ」
「では俺も同席しよう。明日の午後だ。場所は二階の応接間。衛兵たちも控えさせる」
「そこまでしなくても大丈夫よ。それに、シャーリーン様に渡したいものもあるから」
「渡したいもの?」
「ええ。ここでお薬を作る許可をくれる? 王太子様」
「……一体何をする気なんだ?」
エマの耳打ちに、ギルバートは呆れたようにため息をつく。
「やれやれ、君は人が良すぎるよ。シャーリーンは勝手に傷ついていればいいじゃないか」
「あの方があなたを好きだったのは本当よ。泣いていたの。薬を悪用されたのは許せないけれど、私、彼女の気持ちはわかるわ。それに」
「それに?」
問いかけに、エマは思いきりいい笑顔を見せた。
「薬は人を救うもの。シャーリーン様にもそれを知っていて欲しいのよ」