王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~




「エマ、少しテラスに出よう」

ギルバートに誘われたのは、宴も終盤の客間に人が下がりだすころだ。
既に賓客は国王夫妻とともに別室に移り、それぞれ与えられた客間へと下がっていった。今残っているのは、宴会好きの貴族たちが主である。


「疲れただろう。なにか飲むかい?」

「もういいわ。おなかがタポタポよ」


テラスには先客がいたが、ふたりがやって来るのを見て、気を利かせて中に戻っていく。ギルバートはエマの腰を抱いたまま、中の光が届きにくいテラスの奥まで連れていった。


「なんだかあっという間だったな。正直、式典のときなんて噛まずに言うのに必死だったよ」

「長い文言だったわよね。私、覚えるの大変だったわ」

「まったくだ。こういうところが面倒なんだよな」


夜空には星がきらめいている、ギルバートはそれを見上げながら、テラスの桟に体を預けた。


「……エマ、俺はね、君と出会う前は毎日が退屈で諦めに満ちていたんだ」

「諦め?」

「ああ。王子として生まれたからには、国のために、国民のために生きなければならない。自分の意思は置き去りにして……とね。だけど君に出会って。……本当に欲しいものが出来て、そのために戦うことを知った。君は素晴らしい薬屋だよ。俺を、心ごと救ってくれた」

「……ギル」

「そんな君が、俺の妻になってくれるんだ。俺はどんな努力でもする。国を栄えさせ、君を幸せにする。だから君は、ずっと俺の傍で俺を支える薬であってほしい」


夜の中にあっても、ギルバートの瞳は青天の空のようにきらめいている。
彼に見つめられている間、エマは暗闇に落ちることはないのだと感じていた。
< 196 / 220 >

この作品をシェア

pagetop