王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
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「エマ、少しテラスに出よう」
ギルバートに誘われたのは、宴も終盤の客間に人が下がりだすころだ。
既に賓客は国王夫妻とともに別室に移り、それぞれ与えられた客間へと下がっていった。今残っているのは、宴会好きの貴族たちが主である。
「疲れただろう。なにか飲むかい?」
「もういいわ。おなかがタポタポよ」
テラスには先客がいたが、ふたりがやって来るのを見て、気を利かせて中に戻っていく。ギルバートはエマの腰を抱いたまま、中の光が届きにくいテラスの奥まで連れていった。
「なんだかあっという間だったな。正直、式典のときなんて噛まずに言うのに必死だったよ」
「長い文言だったわよね。私、覚えるの大変だったわ」
「まったくだ。こういうところが面倒なんだよな」
夜空には星がきらめいている、ギルバートはそれを見上げながら、テラスの桟に体を預けた。
「……エマ、俺はね、君と出会う前は毎日が退屈で諦めに満ちていたんだ」
「諦め?」
「ああ。王子として生まれたからには、国のために、国民のために生きなければならない。自分の意思は置き去りにして……とね。だけど君に出会って。……本当に欲しいものが出来て、そのために戦うことを知った。君は素晴らしい薬屋だよ。俺を、心ごと救ってくれた」
「……ギル」
「そんな君が、俺の妻になってくれるんだ。俺はどんな努力でもする。国を栄えさせ、君を幸せにする。だから君は、ずっと俺の傍で俺を支える薬であってほしい」
夜の中にあっても、ギルバートの瞳は青天の空のようにきらめいている。
彼に見つめられている間、エマは暗闇に落ちることはないのだと感じていた。