王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~


それからしばらくしてエマの部屋に向かうと、待ち構えていたのはギルバートだった。

「やあ、来たな、英雄」

英雄? なんのことだ?

「バームがいなければ、エマが連れ去らわれていただろうってことだよ。君は誰より頼りになる用心棒だ。ほら」

騎士団員に贈られる勲章の中でも、一番小さく、低い階級のものだ。服につけるためのピンがまげられ、輪っか状になり、そこに紐がかけられている。
これなら、首にもかけられそうだ。

「おめでとう、バーム」

エマが嬉しそうに笑う。僕は目をぱちくりとさせた。

……これ、僕にくれるのか?
勲章だぞ? 人間以外でこんなものもらうやつ、いないはずなのに。

「君を王太子妃専属の護衛官に任命しよう。衛兵たちにも勲章を付けたマグパイには今後一切手出しをするなと伝える。これからも頼むぞ、バーム」

ギルバートがうやうやしく言い、僕の首にその勲章を付ける。

お前に偉そうに言われる筋合いはないぞ。
僕はもともと自分の意志でエマを守っているんだ。

だけど、だけど。……ああこれはちょっとうれしいかもしれない。


思わずエマを振り向いて、翼を広げると、「似合うわ。格好いいわよ」とエマが笑う。

そうだろう。このキラキラ、僕に似合いそうだなってひそかに思っていたんだ。

誰に命令なんてされなくても、僕はエマを守り続ける。
生きている限り、ずっと。

だけどギルバート。
僕がいなくなったときのことを考えたら、やっぱりエマを託せるのはお前だけだと思うんだ。
だからそれまで、ついでにお前のことも守ってやってもいいぞ。

金ぴかの勲章に、僕はちょっとだけひねくれた騎士の誓いを告げた。


【Fin.】
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