王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「言ったでしょう。私たちは人と共存していく道を選んだの。私が私のままでいいと、認めてくれる人がいるんだもの」
「でも、我々は仲間だ」
「……そうね。でも、それはあなたたちの理屈だわ。私たちの意思も確認せず連れ出そうというなら、それはやはり傲慢だと思う。私は彼に、魔女の血筋だと伝えたわ。それでもいいと言ってくれた。だからここにいるの。無理やりでも何でもない。ふたりで分かりあって、ようやく手に入れた幸せなの。あなたに邪魔なんてされたくない」
フィリッポは頭をたれ、ギルバートは呆れたようにフィリッポの腕をねじり上げた。
「ほら、早く何とかしろ」
「……ふん」
フィリップは中へ入ると、ハ長調の音階を奏でた。すると、楽しそうにほほ笑んでいた人たちがハッと我に返ったように真顔に戻る。
ギルバートはそのまま、フィリッポを肩を抱くようにして移動した。
「あれ……今は何時だ。ずいぶん夜も更けたんじゃないか?」
ざわつく人々の合間を縫って、ギルバートが国王のもとへ行く。
「おお、ギルバート。吟遊詩人どのも、お疲れでは……」
「父上、吟遊詩人とひと悶着ありまして。あまり大ごとにもしたくないので、とりあえずはこの場を収めていただけますか」
「どういうことだ」
「あとで話します」
ギルバートは夜会の締めを国王に頼み、そのままフィリップを連れ出した。エマは「上で待ってるわ」と僕に言って去っていく。