王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「ギル、あなたは秘密を守れる人よね?」
「え? ああ、もちろん」
「貴族間の恋愛をどう思う? 政略結婚よりも素敵だと思わない?」
「思うよ、もちろん! エマ、恋しい気持ちはだれにも止められるもんじゃない」
ギルが目を輝かせたのを見て、エマの気持ちも盛り上がってくる。
「そうよね。じゃあお願い。今から話すことは内緒にして、私と一緒にヴァレリア様の相談にのってちょうだい。……ヴァレリア様。私よりも頼りになる人がきました! ギルなら貴族のことにも騎士団にも詳しいし、優しくて信用できる方です」
エマの声が聞こえているのかいないのか。ヴァレリアは目を見張って、ただエマの後ろに立つギルを凝視している。
「どうして、お……」
「これは、マクレガー侯爵令嬢ヴァレリア様ではありませんか。はじめまして。俺はギル。騎士団に所属しています」
ギルバートは、王太子と呼ばれる前に自己紹介をし、手振りで内緒にするようにヴァレリアに訴えた。
ぱちくりと瞬きをしたヴァレリアは、きょとんとしたままのエマを見て、ちゃんと状況を察知したようだ。
「は、はじめまして。ギ、ギル様とお呼びしてよろしいのかしら」
「ええ。ヴァレリア様がここにいるとは驚きました。えーと。エマ。お茶を貰えるかな」
「あ、はい。でもお湯を沸かしてこないと」
「行っておいでよ。俺はヴァレリア様と少し話をしている」