王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~


ギルはソファにまっすぐ向かい、エマを急き立てる。
まるで追い出そうとしているかのような態度に、エマは傷ついた。

たしかにヴァレリアは美しいし、目を惹かれるのはわかるが、だからと言って邪魔者扱いされるのは辛い。この場所の主人は自分だというのに。


「でも、ヴァレリア様が」

「いいわ、エマさん。待っているから。私もあなたのお茶を飲みたいし」


ヴァレリアが「行かないで」と言ってくれるのを期待したが、むしろ彼女もエマに席を外してほしそうな態度だ。


(ヴァレリア様なら男性とふたりきりになるなんて嫌がると思ったのに。……ギルがカッコいいから? セオドア様が好きって言ったのに、……なによ)


切ない嫉妬心にかられながらも、エマはしぶしぶお湯を沸かすために部屋を出た。




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