王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「セオドア様。……その怪我では訓練には出られないんでしょう? 明日も薬を飲みにいらしてください」
「ん? ああ」
「そうですね。午後のお茶の時間に。美味しいものを用意しておきますから」
「ああ。悪かったな、エマ。時間外に」
追い立てられたような気持ちになったのか、セオドアは苦笑して立ち上がった。
扉が閉まる音を聞きつけ、寝室にいたバームが、隙間を抜けてバサバサと飛んでくる。
「何を考えているんだ? エマ」
「バーム。聞いてたの? ……想い合っているんだもの。ふたりで話す時間さえ取れれば、きっとうまくいくはずだわ。明日、ヴァレリア様と鉢合わせ出来るように頑張ってみる」
「お嬢さんのほうはどうやって呼び出すんだ?」
「午後ならギルがお茶を飲みに来るから、……ギルに頼んで呼びに行ってもらう」
社交期の多くの貴族は城下町に建ててある別邸に住むか、王城に部屋を貰っている。ヴァレリアは王家の遠縁にもあたるため、城の中に部屋があるはずだ。それが何階のどの部屋なのかも、エマには分からないが。
「ギルね。……アイツもなんか怪しいんだよなぁ」
バームのつぶやきが耳に触る。でも今はエマも疑問を抱いているので反論は出来ず「そうね」と同意する。
「お、ついにエマもそう思い始めた?」
「秘密はあるのかなって思う。……悪い人だとは思ってないけど」
「あいつが騎士団ってのはきっと嘘だぜ。僕は第一分隊の訓練も第二分隊の訓練も見たけど、あんなに見事な金髪にはお目にかからなかったもん」