王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「で、でも。彼が誰でも、私のお客様であることは変わりないわ。薬やハーブティを気に入ってくれているんだから、悪いお客じゃないでしょう」
「はいはい。エマもあれかな。“恋は盲目”」
「なっ」
「おおこわ。僕は寝るよ。じゃあね」
ばさりと飛び立ち、バームは寝室の棚の上に陣取った。エマは火照った頬を冷やすために窓を開け、風を浴びる。
「どうせ……恋なんてしたって、叶うわけないじゃない」
ひとり言には少し大きな声で、エマはつぶやく。
「私、普通の人間じゃないもの」
ギルが何者であろうと、本当は関係がないのだ。
身分があろうがなかろうが、魔女だということを受け入れてくれる人間なんているはずがない。
バレたら彼の前から身を隠さなければならないのだから。
「泣くなよ、エマ」
バームの声。エマは唇をかみしめたまま、鼻をすする。
「泣いてなんかない」
「はいはい」
バームはひらりと下りてきて、エマのベッドの棚にとまる。
「エマはかわいいよ」
「どこのプレイボーイよ、バーム」
「本当だ。僕の可愛い女の子だよ。ずっと、昔からね。……だから安心して寝ろって」
格好つけるバームに、エマは思わず笑ってしまう。