王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
そうだ、くよくよしていても仕方ない。そう思えて、エマは少しだけ元気を取り戻した。
「……ありがとう、バーム」
「ふん。手がかかるね、君は」
「うん。だから私の使い魔になってくれたんでしょ?」
「君が泣いてたからだろ」
エマが十歳でまだノーベリー領に住んでいたころ、エマとバームは出会った。
クラリスを筆頭とした魔女たちが身を寄せ合いながら暮らしていた、川沿いに建つノーベリー領の端にある屋敷だ。
庭に集まるマグパイの中で、なぜか一羽だけよく目が合う鳥だった。
あそこには同じ年頃の子供がいなくて、エマの遊び相手はジュリアだけ。だからジュリアと喧嘩したらエマは独りぼっちになる。親に泣きつけるのは妹の特権だ。
『使い魔と契約する呪文を教えて?』
エマは母親にそうねだり、その日、バームとエマは契約をした。それからはずっと一緒だ。
「ありがとうね。大好きよ、バーム」
「……お休み」
寂しい夜もバームがいれば寂しくない。
エマは父親に見守られているような安心感に少しホッとして、ようやくベッドに入る気になった。