王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
*

翌日、朝からお客をさばきつつ、人気のなくなった午後一番にやって来たギルに、「ヴァレリア様を呼んできて欲しい」と頼んだ。

ギル自身のことも気にはなっているけれど、まずはセオドアとヴァレリアのことからだ。
だがギルは少し渋っていた。


「ヴァレリア殿を? ああ、王太子のことなら心配することはないよ。彼女のことは選ばない。それより今は俺の話を……」

「昨日、セオドア様が怪我をしたの。お医者様のほうで治療を受けたけれど、私のところにも痛み止めを飲みにくるのよ。……セオドア様、ヴァレリア様のことが気になって、訓練に集中できなかったそうなの。ね、お願い。ヴァレリア様とセオドア様を引き合わせてあげたいの。お茶の時間に薬を飲みに来てくださいと、セオドア様には言ってあるから、ヴァレリアを呼んできてくれない?」


何か言いかけていたギルも、セオドアが怪我をしたと聞いて、一転、やる気を見せた。


「セオドアが? そうか、わかった。ヴァレリア殿が部屋にいるかどうかは分からないけど行ってみよう」


頷いて踵を返すギルを見送って、エマはやはりと確信する。

本当に彼が騎士団員ならば、第二分隊の隊長まで務めるセオドアの怪我を知らないはずはない。
彼の立場はおそらくもっと上なのだ。セオドアと対等に話せて、団員でもないのに騎士団服を来ていても叱責されない。加えて、先ほどの言動を加味すれば、王太子にも進言できる立場の人間だというのも分かる。

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