王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
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一方、エマはなかなか戻ってこないギルにやきもきしていた。
セオドアはすでにやって来ていて、痛み止めの入ったお茶を啜っているところだ。
訓練にも出れないので、ついついヴァレリアの結婚のことばかり考えてしまうらしく、エマ相手に昨日の繰り返しのような話を続けている。
「あ、いらっしゃったわ」
そこに、ギルとヴァレリアがそろってやって来たので、セオドアは思わずお茶を噴き出してしまった。
テーブルの上にしぶきが広がり、エマも焦る。
「セオドア様、汚い!」
「す、すまん。いや、びっくりして」
エマは慌てて濡れたテーブルを拭き、セオドアもあたふたと腕で自分の口もとの拭う。
その間に、ヴァレリアはすぐ近くまで来ていて、思いつめた様子でセオドアの包帯の巻かれた肩を見つめていた。
「……ヴァレリア殿」
セオドアの声は低く、固い。緊張しているのが伝わって来てエマまでドキドキしてくる。
一方のヴァレリアも、今にも泣き出しそうなか細い声で答えた。
「痛みは? 状態はどうなんです?」
「大丈夫です。エマにいい薬を出してもらっているし」
「お怪我なさるなんて。……騎士団ですものね、体を張って私たちを守ってくださっているのよね。良かった。ご無事で……」
うっすらと涙を浮かべて深々と安堵の息を漏らすヴァレリアは殺人級に可愛らしい。実際、セオドアは胸を打ち抜かれたように悶えている。