王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~




翌日も執務の合間を縫って、ギルバートはグリーンリーフを訪れた。
しかし、エマは瞳も合わせない。それどころかギルを中にも入れようともしない。交わす言葉は「お帰り下さい」だけだ。

正体がバレたこともあって、今のギルバートは豪華な貴族服のままだ。エマにはそれがまぶしくて、余計に身分違いを突き付けられているような気がしてしまう。

周りの目が気になり、ギルバートは強引に中に入り込むと、入り口の扉を閉めた。


「エマ。話を聞いてくれ」

「誤解を招くから、もう来ないでください」

「何が誤解だって言うんだ。俺は君が好きなんだ。だから君を妃にしたい。その気持ちに嘘はないぞ」

「国王様に怒られます。もうやめて」


ギルバートが真摯な態度で愛情を表現してくれるたびに、心が切り刻まれそうだった。

恋心を忘れる薬が欲しい、と切実に思う。エマの薬のレシピ帳にはそんなものはなかったが、作れないわけではないだろう。クラリスに頼んでみようかとも考えた。


「エマ!」


しびれを切らしたように、ギルバートがエマの腕をつかんで振り向かせる。


「俺が王子でなければ……恋人になってくれるのか?」


ただでさえ、心を殺して突き放しているのだ。これ以上の甘い言葉はエマには辛いだけ。堪えきれず目尻に浮かんだ涙に、ギルバートも一瞬ためらいを見せる。

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