Lingerie
ふと思うのだ。
捕われたのはどっちか。
先に惚れた俺なのか、そんな俺に自分の都合をいいように都合よく利用された彼女の方なのか。
捕らえるつもりで内側に入り込んで、時折依存させるように甘い毒を流し込むのに自分もその毒の被害を被る。
「触らせてください」
「っ……」
毎夜の決まり文句だ。
薄暗い部屋のベッドの上、お互いに行きすぎた扇情的な展開にはならぬものだと念頭に置いての時間である筈なのに。
その言葉を弾けば必ずその顔を赤く染め挙げる彼女がいる。
緊張を示す様に息を飲んで、平常を見せようとはしているがその目は至る所に泳いでいるのを知っている。
そんな彼女にそっと指先を伸ばし触れてみれば、
「あっ……」
聞こえぬほどか細く、それでも俺の欲を悪戯に煽るには充分すぎる声音を漏らす。
毎夜繰り返される俺たちの風変わりな恋人の証明。
素肌に触れて熱や鼓動を感じ取るのに決して踏み込んだ関係には持ち込まない。
お互いにそれなりの緊張や欲情は疼いているのに、一線を越えようとは言いださないし行動もしない。
口づけすら交わさぬ中途半端な扇情の夜。
それでも本当に一線のギリギリでの踏みとどまりなのだ。
彼女の苦悶する顔を見たらきっとあっさりとその線を踏み越えてしまう。
肌や吐き出される息と等しい熱を孕む双眸を見つめてしまったら……欲求のままに貪って貪って、骨も残さぬほど食らい尽くして…。
後に残るのはきっと虚しさと後悔と。