Lingerie~after story~
「本当にさぁ、なんなの?何でいきなりドタキャンするかなぁ」
ほんの少しばかりいつもより熱の孕んだ声音の不満を漏らしたのは、ダイニングレストランのカップルシートなるテラス席と言うのか。
パーテーションで区切られ他の客の視界からは遮られつつ、目の前には夜景の広がるなかなかムーディーな一席。
最初案内された時はこのムーディーさに少々気後れしたものの、イズミに至っては普段と何ら変わらず『たまにはいいじゃない』なんて設置されているソファに座りこんでワインを注文したのだ。
気後れしたのは最初だけ。
座って飲み始めてしまえばあとはいつも通り。
お互いの仕事の愚痴や悩み、イズミの新しいデザインの話なんかで盛り上がって。
同時に摂取するアルコールの作用で頑なな心もほどけ始めれば、抱いていた鬱憤も零れ始めると言うもの。
「あら、良いじゃない。あんたたちは付き合ってるんだからまだまだ腐る程デートのチャンスはあるわよ」
「それは…そうだけど…折角……」
「んふっ、キスしようと意気込んでたのに?」
「っ…だって…イズミなら分かるでしょ!?私のそんな意気込みがどれだけ稀で貴重な事か!」
「まあ、そうね。あんたからの貴重なお誘い…、私なら易々無下にはしないと思うけど。九条も馬鹿ね」
「……九条くんを馬鹿にしないで」
「プッ…あんたね、愚痴りたいのか惚気たいのかどっちかにしなさいよ」
いや、むしろ愚痴りたいのよ?不満を連ねたいのよ?
でも他の人に彼を貶されるとなんかこう…。