Lingerie~after story~
思わず咎めるように名前で呼んだのに、堪えるどころかどこか満足気にクスリと笑って歩きだす姿にはこれ以上の反抗を思いつかない。
実際時間に制限のある事態であるのだ。
色々と不満や不安はあれど渋々諦め彼の背中を追って空港内へと身を投じた。
ああ、でも……やっぱりなんか恥ずかしいんですけど。
だって、空港に来る人間と言えば当然みんな目的の為に自分の身支度がっつりの人ばかりじゃないか。
仕事目的であればキッチリとしたスーツに女性なら化粧の武装。
旅行であっても自分好みの装いに洒落込んで。
そんな中ね、起き抜けすっぴんの手ぶらって…物凄く浮くと思うのよ、女性は特にね…九条くん。
そんな私の心情などお構いなしにすいすいと雑踏を抜けていく彼の姿を、周りの視線を気にしながら歩きぬけて溜め息を幾度か。
男の人は良いよね、その身一つで何とか様になるんだもん。
九条くんだってそうだ。
出で立ちは至ってシンプルに黒無地Tシャツにジーパン。
バイクを乗っていた事もあっていつもは鬱陶しい前髪はしっかりと両サイドに流され綺麗な顔立ちのお披露目だ。
当然すれ違う女子の視線を攫っている事には少々ムッと嫉妬が疼く。
まあ、でも仕方のない事だ。
そう色々とね。
「あ、アリアさん、」
往生際悪く、まだ渋る心に仕方ないと説き伏せていたタイミングだ。
私の前を歩いていた姿がスッと片手を上げたかと思うと、記憶にある名を呼んで歩みを速めた。