Lingerie~after story~
「で?あんたは何?今からこの土砂降りの中小間使い?」
「小間使いって。違うわよ、帰るの」
「はっ?用事?それとも体調でも悪いの?」
「有給処理の関係よ。部長に有給を最低限でいいから消化しろって。私は働き過ぎの勤勉なんだそうよ」
「それで早速半休ってわけ?」
「まぁ、実際貧血気味でダレてたかったから丁度いいかなって」
この雨の中の帰宅には少々億劫だと気分も落ちるけど。
そんな風に目に映したのはガラス張りのエントランスから伺える外の悪天候だ。
風が無いせいか物の見事に滝の如く地面で跳ね返っている雨粒が白くハッキリと見える程。
これは傘があろうが濡れる事免れぬ雨量だろうと、諦めに似た意を決して息を吐きだす。
「ケチらないで車で帰った方が賢明よ」
「あー、うん。とりあえず出て無理そうならそうする」
「あと、エントランスの外階段滑りやすくなってるから気をつけなさい」
「ああ、そうなのよね。あの階段濡れてると本当に滑るのよ」
「とにかく、気をつけて帰るのよ?体調悪いなら尚の事」
「ありがとう。本当に無理せずダメならタクシー捕まえるから」
心配性なイズミにそんな言葉を別れの挨拶として響かせると、どちらともなく片手を上げお互いに目的の方面へと歩みだす。
入り口に近づく程に鼻腔を掠める雨の匂いと聴覚に響く自然の騒音。
風流とは程遠い雨脚は実際に外に出て目の当たりにすると途方にくれる。
確かに…タクシーの方が賢明ね。
一応自分の手にはモスグリーンのシンプルな傘が握られており、カバンの中には予備の折り畳みまで。