Lingerie~after story~
ひぃぃぃっ!!と、気がついた時には傘を開き、その人の目の前から傘をさして雨を屋根を広げてしまっていた。
刹那に絡む。
ああ、なんて……色々な概念を忘れさせる様な双眸か。
一瞬、全ての五感がその人の空気に飲まれ、煩わしかった雨の音も匂いも飛んで消えた。
そんな瞬間にも無情に降り注ぐ雨粒は、傘からはみ出た私の体を瞬く間に濡らしていたというのに。
張り付く布地に不快感さえ抱くのを忘れた私に、当たり前の感覚に引き戻してくれたのもまた…、
「っ……」
「……濡れてしまいますよ」
そんな響きは後付けで、聞き入れた時には背中に回された手によってその人の方へと引き寄せられていた。
その瞬間にやっと自分の背中が冷たいとまともな感覚が舞い戻ったのだ。
「……っ、あ、すみません!!あ、あの、お着物だし、濡れてはいけないと出しゃばって行動してしまいました!」
「着物?……ああ、こんなジジイの装いよりも、若いお嬢さんが雨に濡れる方が問題で嘆かわしい」
「す、すみません」
いや、決してね、決して厳しい口調じゃないんです。
むしろ驚く程に穏やかで、その声音や音の発し方一つに至るまで気の行き届いた様な流暢さ。
ってか…え?
ジジイ?
ジジイって言っちゃう様な年齢の人なの?この人。