Lingerie~after story~
ついつい同じように曇天の空を見上げて、その瞬間あるのかと同じ様に見つめてしまっていた自分がいた。
それでもだ、ハッと我に返ると近すぎた距離を離し、当初の目的を果たさんと持っていた傘を差し出してみる。
「もし宜しければ。……迎えが来ると言うのであれば不要のモノであるかもしれませんが」
「お嬢さんは、」
「私はほら、こうしてもう一本ありますので」
ほらね!と鞄の中から赤い折り畳み傘を見せて示すと、改めてどうぞとさしていた傘の柄をその人の方へ。
そんな私にキョトンとした眼差しが向けられていたけれど、すぐに抜き取られた傘と浮かべられた柔らかな笑み。
「優しいお嬢さんですね。では、その優しさの恩恵にあずかって」
「お、恩恵なんて大層な。えっと……それではこれで、」
何だろうな。
返される反応が実に丁寧で丁重で、どこか逃げ出す様にその場を去ろうとしたのは何とも言えない羞恥心からだろう。
だって、あんまりにも善人の様に私の事を扱ってくるから。
勿論善意の心からの行動であったけれど、ここまで感謝されるとどうも落ち着かず居た堪れない。
そんな急いた行動で急いで折りたたみ傘を開き足を踏み出したタイミングだ、
「ああ、そうだ。お嬢さん、」
「えっ?…っ___!!!」
踏み出した足が階段の一段下に着いたと同時、呼び声に振り返り注意力散漫だったのも原因だろう。
イズミの言葉が脳内で再生されたのは見事バランスを崩して倒れかけている最中。
『エントランスの外階段滑りやすくなってるから気をつけなさい』
気をつけるつもりだったのよ……。