Lingerie~after story~


なんか、これさえもどこか自分の記憶を掠めてしまう。

しかも、雨の音、雨の匂いだ。

意図とせず鬱々とした感情が浮上しかけたタイミングだ。

「服をお貸ししたいとは思うんですが……何分若いお嬢さんが着る様洋服は持ち合わせてなくて……着物でも大丈夫でしょうか?」

「あ……はい、大丈夫です。着付けも自分で出来ますので」

「それは、今の若いお嬢さんにしては珍しい。着物を纏う様な習い事でも?」

「……華道、茶道、書道、一通りは嗜みとして」

「……やはり、そうでしたか」

「……えっ?」

「いえね、雰囲気と言うのか、所作と言うのか。節々に育ちの良さが出ておられたものだから」

「………」

「付け焼刃じゃない。それこそ長い年月に染み込んだ自然の所作だ」

「………」

「実に、慎ましくも美しいと密かに惚れ惚れとしていたところです」

「っ……」

これは分かりやすいお世辞の類だろうか?

いや、この人はそう言う事を軽く口にしない人の様な気がする。

だからなのか、いつもであるなら社交辞令だと流せる言葉でさえ間に受けて、謙遜する事さえ忘れて何とも言えない感情に胸の奥が擽られた。

褒め……られた。



< 269 / 416 >

この作品をシェア

pagetop