Lingerie~after story~
なんか、これさえもどこか自分の記憶を掠めてしまう。
しかも、雨の音、雨の匂いだ。
意図とせず鬱々とした感情が浮上しかけたタイミングだ。
「服をお貸ししたいとは思うんですが……何分若いお嬢さんが着る様洋服は持ち合わせてなくて……着物でも大丈夫でしょうか?」
「あ……はい、大丈夫です。着付けも自分で出来ますので」
「それは、今の若いお嬢さんにしては珍しい。着物を纏う様な習い事でも?」
「……華道、茶道、書道、一通りは嗜みとして」
「……やはり、そうでしたか」
「……えっ?」
「いえね、雰囲気と言うのか、所作と言うのか。節々に育ちの良さが出ておられたものだから」
「………」
「付け焼刃じゃない。それこそ長い年月に染み込んだ自然の所作だ」
「………」
「実に、慎ましくも美しいと密かに惚れ惚れとしていたところです」
「っ……」
これは分かりやすいお世辞の類だろうか?
いや、この人はそう言う事を軽く口にしない人の様な気がする。
だからなのか、いつもであるなら社交辞令だと流せる言葉でさえ間に受けて、謙遜する事さえ忘れて何とも言えない感情に胸の奥が擽られた。
褒め……られた。