Lingerie~after story~
「ああ、これなら良いかな。あなたの肌には菖蒲色が映えそうだ」
そんな言葉と一緒に丁寧に箪笥から取り出され見せられたのは綺麗な菖蒲色の着物だ。
見るだけで分かる上質で品のある色味と柄と。
こんな高価なものを、と躊躇う心はあれど、なんやかんやで着る流れに持ち込まれるだろうと、先の応用力で言葉は飲み込む。
「ありがとうございます」
「着替えは隣の部屋で」
素直に受け取ると案内されたのは隣室で、襖の向こうの部屋は8畳ほどか。
「先程の部屋は覚えておられますか?」
「えっ?あ、はい」
「着替えたらその部屋にお出でなさい」
「分かりました」
広いと言ってもさすがに来た道筋くらいは覚えている。
戻ることが難しい入り組んだ造りでもなかったと、了承の声を響かせれば柔らかな笑みを浮かべ足音もなく部屋を後にするその人。
ああ、よくよく考えたらまだ名前も聞いていないのだ。
私も名乗っていないし。
とりあえず着替えを済ませたら最初にその確認をしようと、不快に張り付いていた自分の衣服を脱ぎ始める。
脱ぎ捨てた瞬間に素肌に触れる空気が爽やかで心地よい。
鬱陶しくて重苦しかった何かを脱ぎ捨てたような開放感を覚えて、触れる空気がさらりと肌の表面を乾かし、そんな上に夏用の麻襦袢をはらりと纏う。