Lingerie~after story~
ああ、この感覚……なんだか久しぶりだ。
自然と身が引き締まる感覚。
背筋もスッと伸び、襟を合わせて後ろを品よく抜いていく。
覚えているものね。
暫く着物を着る様な時間からは遠ざかっていたというのに。
それこそ、洋服を着るのと大差なく、さらさらと無駄なく動いて自分の身に菖蒲色を着付けていく指先。
帯びに至っても難なくだ、特別な場でもないから普通にお太鼓結びで仕上げて、部屋にあった姿見に自分を映し込めば。
「……久しぶり」
思わずそんな一言が零れる。
鏡の中の自分に。
それでも、不思議なものだ。
こんな風に着物を纏えば必然的に訪れるのは息苦しい感覚だと思っていたのに。
場所が違うから?
身構えていた様な不安な感覚は浮上せず、それどころかようやく適した姿に身を変えたような。
やっと、この場に調和出来たような安堵と居心地の良さと。
昔は苦痛にも感じた和装の締めつけさえ、今は自分の感覚を引き締める様な。
忘れていたな。
そうだ、決して……嫌いではなかったのだ。
こうして着物を纏う事は。
そうして身をまとめてしまえば浮いてしまうのが乱れた髪型だろう。
縛っていたゴムをほどき、自分の鞄からヘアゴムとピンとコームを取り出し、簡単にも和装に見合うようにと纏めあげる。