Lingerie~after story~



きっと、とてもいい人だ。

そんな風に感じ取れてしまった、自分に向けられた申し訳なさげな笑みで。

「だいぶお待たせしてしまいましたよね?他の車の玉突き事故の重体にハマってしまって身動きが取れず、これでも急いだのですが、」

そんな理由であるなら遅延も仕方あるまいに。

どこか必死に謝罪してくる姿には好感ばかりが強まっていけない。

この人を知れば知る程断る機会を逃してしまう気がする。

良い人だと思う程に自分の決意に罪悪を覚える様な気がして。

断るタイミングがあるとすればだ……、

「今すぐに__」

「申し訳ありませんっ」

今しか……ないだろう。

そんな直感から、先に言葉を綴っていた彼の響きを掻き消して、自分の決意からの謝罪を部屋いっぱいに響かせた。

両手を畳みにつけ、これでもかと頭を下げての謝罪表明。

それにはさすがに相手も何事かと呆けて固まり、シンッと静まった一室は私の言葉を待つばかりと状況が整った。

もうすでにジワリと罪悪感が滲んでしまう。

ああ、やはり今切り出して正解だったのだ。

自分の判断に僅かにも自信を持ち直して、一度キュッと歯を噛みしめてからゆっくり顔を上げて立ち尽くしている彼を見つめた。

「急いで出向いていただいたのに、申し訳ありません」

「……えっと、あの」

「っ……この縁談お断りしたく、本日は出向いて__」

____参りました。

そう続く筈の言葉が自然と口内で溶けて消えた。

開いたままの口から今音を発しようとすれば、感情のまま驚愕に満ちた音しか零れないだろうと予想できる。

だって……えっ?……あれ?

「…………は?…………………はぁぁぁぁ?!!!」

いやいやいや、その反応私も、私もだよ?

「っ……何してんの!?寧々さん?!」

いや、それもだってぇ!!

九条くんっ!!?


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