愛人契約
「やっと、笑ってくれたね。」

「あっ……」

自分のあまりにも、世間知らずな部分に、恥ずかしくて、愛想を振りまく事すら忘れていたのだ。


「お席は、こちらになります。」

そこは一番窓側の席だった。

「どうぞ。」

ウェイターの人に椅子を引かれ、それすらにも緊張した。

「何を飲む?」

「ああ、赤ワインを……」

「赤ワイン?」

本田さんは、私を見てまた笑っている。

「……可笑しいですか?」

「いや、そこだけ大人なんだなぁと思って。」

「えっ……」


やだ。

こういうお店に、あまり慣れていない事も、知られちゃった。


「お酒、強いの?」

「いえ。むしろ弱いんです。だから、最初にビールとか飲んでしまうと、飲みたいお酒が飲めなくなってしまって。」
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