血まみれ椿姫
でもあれは間違いなく起こった事件なんだ。


俺と、城の目の前で……。


綾菜ちゃんの血のぬくもりを思い出した俺は気分が悪くなり、トイレに入った。


何度か嘔吐したが、胃液しか出てこない。


そういえばあれからまともにご飯を食べた記憶もない。


どうやって過ごしていたのかも、ひどく曖昧な記憶だった。


「城は……?」


ひとしきりえずいてから、背中をさすってくれていた母親にそう聞いた。


「入院してるわ」


「入院?」


俺は驚いて振り向いた。


「えぇ。相当ショックだったみたいね……」


母親にそう言われ、俺はうつむいた。


繊細な城なら気絶くらいしているだろうと思ったが、まさか入院までしているなんて……。


でも、今回の事を知っているのは俺と城だけだ。
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