花と蝶
「僖嬪、美しい装いだ」
欣宗は僖嬪を手招きをした。それに僖嬪は素直に応じた。僖嬪は欣宗のすぐ隣に座ると一瞥してみせた。
「あなたが正嬪ね。どんな方かと思ったら…お美しいのね、儚げで月のようだわ」
「僖嬪媽媽、古より月は中殿媽媽の象徴にございます。わたくめが月になれましょうか?」
「嫌味なほど学がおありなのね」
「よさぬか。こうして宴会を開いたのは後宮の和睦を深めるためだ」
欣宗がそういうと僖嬪は笑顔でその場を繕ってみせた。表面は笑顔でも内心は穏やかではないだろう。
欣宗には正嬪を含む3人の嬪と承恩尚宮が1名いた。
僖嬪、淑嬪、正嬪、そして劉尚宮だ。子どもは淑嬪が産んだ哲仁君、延仁君、劉尚宮が産んだ誠仁君の3人がいる。
毅宗の後宮からしたら規模はとても小さいものだったが、欣宗は偏愛気味だったから寵愛を巡る争いは激しかった。とは、言っても争いは中殿韓妃と僖嬪だけの間だけであった。
正嬪はお膳に出された肴を少しずつ食べて様子を伺った。
中殿韓妃や淑嬪、劉尚宮がいても欣宗の視線は僖嬪に注がれている。そこに黙って酒を飲んでいた中殿韓妃が口を開いた。
「主上殿下、後宮揀擇をお忘れですか?」
「後宮揀擇?」
「正嬪が入宮する前になさると仰っていましたね…君王が約束を破っては示しがつきませんよ?」
「正嬪がいればよい」
一気に視線が正嬪に注がれる。正嬪は困ったような口調で言った。
「中殿媽媽の言う通りです。約束を反故にはできません」
「主上殿下、正嬪もそう仰っています。王子が3人おりますが、先王の御代には御子が19人もいたのですよ」
「後宮揀擇は中殿の主管だ。反故にはせぬ」
欣宗は僖嬪を手招きをした。それに僖嬪は素直に応じた。僖嬪は欣宗のすぐ隣に座ると一瞥してみせた。
「あなたが正嬪ね。どんな方かと思ったら…お美しいのね、儚げで月のようだわ」
「僖嬪媽媽、古より月は中殿媽媽の象徴にございます。わたくめが月になれましょうか?」
「嫌味なほど学がおありなのね」
「よさぬか。こうして宴会を開いたのは後宮の和睦を深めるためだ」
欣宗がそういうと僖嬪は笑顔でその場を繕ってみせた。表面は笑顔でも内心は穏やかではないだろう。
欣宗には正嬪を含む3人の嬪と承恩尚宮が1名いた。
僖嬪、淑嬪、正嬪、そして劉尚宮だ。子どもは淑嬪が産んだ哲仁君、延仁君、劉尚宮が産んだ誠仁君の3人がいる。
毅宗の後宮からしたら規模はとても小さいものだったが、欣宗は偏愛気味だったから寵愛を巡る争いは激しかった。とは、言っても争いは中殿韓妃と僖嬪だけの間だけであった。
正嬪はお膳に出された肴を少しずつ食べて様子を伺った。
中殿韓妃や淑嬪、劉尚宮がいても欣宗の視線は僖嬪に注がれている。そこに黙って酒を飲んでいた中殿韓妃が口を開いた。
「主上殿下、後宮揀擇をお忘れですか?」
「後宮揀擇?」
「正嬪が入宮する前になさると仰っていましたね…君王が約束を破っては示しがつきませんよ?」
「正嬪がいればよい」
一気に視線が正嬪に注がれる。正嬪は困ったような口調で言った。
「中殿媽媽の言う通りです。約束を反故にはできません」
「主上殿下、正嬪もそう仰っています。王子が3人おりますが、先王の御代には御子が19人もいたのですよ」
「後宮揀擇は中殿の主管だ。反故にはせぬ」