花と蝶
そしておもむろに劉尚宮は言った。
「お苦しいのですね」
「苦しいわ。息がいつも吸えなくなるくらい」
「左様ですか…あ、わたくしめがいてはゆっくり出来ませんね。お暇します」
劉尚宮は立ち上がり、正嬪に向かって一礼すると寝所から出ていった。入れ違いに朴尚宮と医女今善が入ってきた。今善の手には薬がのった盆がある。朴尚宮が言った。
「媽媽、お薬の時間です」
「ありがとう」
今善が正嬪の前に薬を置いた。ハトムギの汁物よりはましに見える。朴尚宮が薬について説明を始めた。
「御医が主上殿下のご命令で特別に調合させたものです」
「ありがとう」
薬を手に取ると正嬪はそれを一気に飲み干した。苦い。しかし、心が感じる苦さよりはましに思えた。
「少し眠るわ」
正嬪がいうと2人は顔を見合わせて出ていった。誰もいなくなった瞬間に体を横たえる。自然と涙が出た。
とても疲れているのが分かる。
正嬪が倒れたと聞いて欣宗は気が気ではなかった。そして出される薬、御膳など全て自ら毒味をした。そのたびに金尚膳や毒味役の尚宮に諫められた。
その様子を邪険にみていたのは僖嬪だった。自分が倒れた時ですら、欣宗はそこまでしてくれなかったからである。苦々しい思いだった。寵姫という自負もあったから余計だった。
「お苦しいのですね」
「苦しいわ。息がいつも吸えなくなるくらい」
「左様ですか…あ、わたくしめがいてはゆっくり出来ませんね。お暇します」
劉尚宮は立ち上がり、正嬪に向かって一礼すると寝所から出ていった。入れ違いに朴尚宮と医女今善が入ってきた。今善の手には薬がのった盆がある。朴尚宮が言った。
「媽媽、お薬の時間です」
「ありがとう」
今善が正嬪の前に薬を置いた。ハトムギの汁物よりはましに見える。朴尚宮が薬について説明を始めた。
「御医が主上殿下のご命令で特別に調合させたものです」
「ありがとう」
薬を手に取ると正嬪はそれを一気に飲み干した。苦い。しかし、心が感じる苦さよりはましに思えた。
「少し眠るわ」
正嬪がいうと2人は顔を見合わせて出ていった。誰もいなくなった瞬間に体を横たえる。自然と涙が出た。
とても疲れているのが分かる。
正嬪が倒れたと聞いて欣宗は気が気ではなかった。そして出される薬、御膳など全て自ら毒味をした。そのたびに金尚膳や毒味役の尚宮に諫められた。
その様子を邪険にみていたのは僖嬪だった。自分が倒れた時ですら、欣宗はそこまでしてくれなかったからである。苦々しい思いだった。寵姫という自負もあったから余計だった。