花と蝶
僖嬪は侍女内人の香児に肩を揉ませていた。
「正嬪が来てから、主上殿下はこなたの殿閣に来なくなったわ」
「今だけです。正嬪など牡丹と変わりありません」
「男が好む匂いがなくても花のかんばせを見るために殿下はいらっしゃるわ!馬鹿ね!」
僖嬪は香児の手を振りほどいた。香児は頭を何回も下げた。
「香児、茶菓子を用意して」
「は、はい」
香児は後ずさりしながら部屋を出た。1人になった僖嬪はため息をついた。
僖嬪は欣宗の第1後宮にして寵姫であった。将門の生まれで、後宮揀擇で選ばれて淑儀の位を賜った。そこから一年後に嬪を賜り、「僖」の徽号を直々に与えられた。子がいない身分で嬪になった彼女は名実ともに寵姫であった。
「正嬪が来てから、主上殿下はこなたの殿閣に来なくなったわ」
「今だけです。正嬪など牡丹と変わりありません」
「男が好む匂いがなくても花のかんばせを見るために殿下はいらっしゃるわ!馬鹿ね!」
僖嬪は香児の手を振りほどいた。香児は頭を何回も下げた。
「香児、茶菓子を用意して」
「は、はい」
香児は後ずさりしながら部屋を出た。1人になった僖嬪はため息をついた。
僖嬪は欣宗の第1後宮にして寵姫であった。将門の生まれで、後宮揀擇で選ばれて淑儀の位を賜った。そこから一年後に嬪を賜り、「僖」の徽号を直々に与えられた。子がいない身分で嬪になった彼女は名実ともに寵姫であった。