蜜月同棲~24時間独占されています~

「それでは誓いのキスを」


促されて彼と向かい合う。
俯いていると、薄いベールがゆっくりと持ち上げられて視界がクリアになった。


徐々に視線を上げる。
彼の胸元には、私のブーケと同じ白いバラのブートニア。


彼と目を合わせる頃には、私はもう涙に濡れてひどい顔だったんじゃないかと思う。
見かねた彼が、指で涙を拭ってくれた。


視線を交わしながら、彼が静かに上半身を屈める。


触れる寸前目を閉じて、触れた唇が震えていることに気が付いて心が温かくなる。
彼も緊張しているんだと、知ることができたから。


何度も交わしたキスだけれど、誓いの意味を込めたものは初めてで
その重みを、彼も感じてくれていることが幸せで。


祭壇の前、家族や友人が見守る中で
触れたキスはこれまでで一番優しくて、羽で触れるようで


きっと生涯忘れることない、キスだった。


< 199 / 200 >

この作品をシェア

pagetop