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ハル先輩の大きな手が何度かわたしの頭をポンポンと撫でるものだから、思考回路は既にショート寸前だった。


「それじゃ行こうか」


と、何事もなかったかの様に先に歩き始めたハル先輩。

フリーズしかけた思考を何とか立て直し、わたしはその背中を追った。







昇降口を出ると、辺りは薄闇に包まれ思いの外暗かった。

この時間学校に残っているのは、大会に向けて本格的な練習に励む部活動生とその顧問の先生達くらいだろう。

軽音部の様な幽霊部員ばかりが在籍する部は、本来居残って練習する必要はない。

そもそも居残って練習するという概念自体が部員にないのかもしれない。

それは学校全体としての認識でもあるのか、新しく併設された部室棟に他の部が移って行く中、軽音部の部室だけは何故か旧校舎に取り残されたままだった。

これまでこの件について、全く疑問を抱かなかったと言えば嘘になる。

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