あ、あ、あ愛してる「君に伝えたい思いをこめて」
午後からの授業は新曲のスタジオ練習とエマの様子が気になり、集中できなかった。

「有栖川」

終業のベルとほぼ同時に、教室を出ようとすると
国語教師のクラス担任に呼び止められた。

「今週中に進路調査書、提出な」

担任に言われて、あーそんな書類を受け取ったなと思い出す。

「了解です」の代わりに、指でOKと返事して会釈し、スタジオへ急いだ。

スタジオに到着すると、拓斗と湊太のベースに混じってピアノの音が聞こえてきた。

聞き覚えのあるピアノの音色、久しぶりに聴くエマの音色。

間違うはずなどなかった。

「エ、エマ……」

エマは俺に気づかず、無心にピアノを弾いている、俺が作った新曲を。

俺はヴァイオリンを取り出し、エマのピアノに合わせた。

いきなりのオレ参入。

だか、拓斗も湊太もエマも乱れなかった。
< 70 / 85 >

この作品をシェア

pagetop