あ、あ、あ愛してる「君に伝えたい思いをこめて」
「わわかってる。えエマはえエマだ。じ自分をしー信じろ。Ich weiß. Emma ist Emma.Glaube an Dich」

硬く俺に抱きついたエマ。

俺はエマを抱きしめ返した。

「和音、練習の邪魔になるよね。わたし、速水の所で終わるのを待ってる」

エマが俺を押し剥がし冷めた口調で言うと、拓斗たちが「何だ、もうおしまいか」とつまらなそうに言った。

「楽しかったし、いい曲だから頑張って」

俺はエマが拓斗と奏汰に微笑むのを見ながら、立ち直ってくれればいいと切に思った。

エマがスタジオを出た後。

拓斗と奏汰が「あれだけ弾いて、何でデュオがうまくいかない?」と不満げに訊ねてきた。

『デュオの相方が、エマの演奏でも満足しないんだ』

俺は手話でこたえる。

「そうとうヤバい奴だな」
< 72 / 85 >

この作品をシェア

pagetop