月が綺麗ですね
熱をもった唇が、同じように熱を持った私のそれにゆっくりと重なった。


副社長の腕は私を包み込み、ぐっと彼に引き寄せられる。

私が彼の唇を拒否できるはずがない。

ゆっくりと動く彼の唇に私も応える。


...でも...もしかしたらこれも...。

思考に雨雲が押し寄せる。広がった重たい雲は一気に雨を降らせ急激に熱が収まっていく。


私は彼の唇から顔を反らした。


「...ん、どうした?」


その問いには答えず、彼の胸に手をあてて距離を作る。


「同じことを...同じことを飯塚さんにもしているんですよね?」


私の発した言葉は急速に何かを引き寄せた。

それが雷(いかずち)であることに気づくのに時間はかからなかった。
< 126 / 316 >

この作品をシェア

pagetop