月が綺麗ですね
「それから...」

少しためらいがちに、「俺の名前は徹だ」ボソっと呟く。

目の前にいる人は本当に副社長なの?

イケイケで俺様感はすっかり失っている。


「...はい、知っています」


私は言葉の意味が分からずポカンとしてしまう。


「名前で呼んだほうがお互いの距離がグッと近くなるだろう?」


あっ、そっか。そういうことか。納得しながらもためらってしまう。


「...でも」

「嫌か?」

「...だって、名前で呼んだら私...」


うつむく私の顔を副社長はのぞき込んで来る。


「お前が言おうとした先を、俺は分かる気がする」

「じゃあ言ってみてください。絶対分からないと思います」

「言ったな。当たったら何をしてくれる?」

「か、賭けですか?」

「当然だ」


子供っぽい笑顔を見せる。
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